2008年6月22日日曜日

中国語は子どもにとって買いか?

随分前に、ニューヨーカーの間では中国人のナニーをつけて、子どもに中国語を覚えさせることが流行っているという記事をいくつか読みましたが、その流れはとうとう陸の孤島スイスにまでやってきたようで、6月22日のSonntagszeitungにこんな記事が掲載されました。

かいつまんで内容を説明しますと、幼い子ども達が中国語を覚えるために中国系の女性が運営している保育園に預けられている、と。
記事の中ではアメリカの中国語ブームのきっかけはJim Rogersが自分の子どもに中国語教育をしたことを本に書いたことだ、とあり、アメリカの中国語ブームのきっかけを知りたいとずっと思っていた私は、なるほどと思いました。

フランス語のような、英語に「比較的」近い言葉でなく、中国語のような系統の違う言葉を必要のない子ども達にそこまでして学ばせるのはなぜなんでしょう?
「21世紀の中国は19世紀の大英帝国、20世紀のアメリカ合衆国に匹敵する存在になるから。」
「世界でもっとも難しい言葉だから大人になってからでは覚えられない。」
いろいろ理由はあるようですが、この2つがどのニュースでもよく目にする理由のようです。
でも、中国語が話せることが、21世紀を生きていく子ども達にとってそれほど重要でしょうか?
中国語がばっちりなら、ビジネスチャンスが広がって経済的に有利なポジションに付けるんですか?
そう考えている親が、母語も怪しい子ども達に中国語を習わせようとやっきになっていると思うのですが、冷静に考えてみた場合、非漢字圏に生活している子どもが1日数時間中国語を話す機会があっても、読み書きできるようになると思いますか?
或いは、読み書きできなくても「ペラペラ」話せるようになれば、それがビジネスで有利になるんでしょうか?
考えられる反論としては、「ナニーや託児所はスタートであって、将来的には座学で読み書きの修得も視野に入れている」のかも知れません。
上に書いた記事でも、チューリッヒのインターでは中国語のコースが開講されていて、既に定員一杯だとあります。
週に何コマ授業があるのかわかりませんが、それで本当に使える中国語が身につくのでしょうか?

私自身はそこまで楽観的ではありません。
子ども自身に中国語を身につけたいという気持ちがなければ、笛吹けど踊らずになるんではないでしょうか。
20年後、30年後、中国語と母語のバイリンガルで成長した子ども達が全員親の希望どおりビジネスの世界で国際的に活躍するのでしょうか?
仮にうまく成長して中国語でビジネスできるまでになったとして、その時中国は本当に21世紀の超大国になっているのでしょうか?
超大国でなくても、普通話が今以上に中国国内に浸透しているのでしょうか?

子どもの時に母語とは系統の違う外国語に触れる経験をすること、異文化に触れることは子どもの成長にとって意味なる重要なことだと思います。
でもそこに将来の成功という親の打算が入り込んだ場合、子ども達は中国語をどう受け止めるんでしょうか?

実は興味がないのに仕方なく中国語を習っている子どもを12人知っているんですが、そのうち11人は中国語が嫌いになったそうです。(残り一人は好きでも嫌いでもないとか)
好きでもないし、必要でもない漢字を、いくら簡体字とはいえ覚えなくてはいけないのは、続かなくて当たり前かも知れません。
同じ先生に中国語を習っている青年は、高校生の時に中国語に興味を持って習い始め、かなり話せるようになったと思い、父親と中国旅行に出かけたそうです。
しかし都市部を出たら自分の中国語が全く通じなかったことにショックを受け、学習を辞めてしまいました。
スイスも土地によって方言はかなり違いますが、標準語が全く出来ない人というのは中国の比ではありません。

日本人が中国語を習うよりもインド=ヨーロッパ語系の人が中国語を習う方が、最初のハードルは相当高いと思います。
強いモティベーションがないと続かないんではないでしょうか。
かりにモティベーションがあったとしても、子どもに強いる負担はかなりのものになると思われます。
友達と遊んだり、好きな本を読んだりする時間を削ってまで、子ども時代は必要のない、そして将来も本当に必要かどうかわからない言葉を覚えることが、その子のためになるのかどうか...。

こういう早期外国語教育をしている親の多くは、英語、中国語に限らず、十中八九自分はその言葉ができない人が多い、というのは、私が周囲を観察していて思うことです。
そして、外国語ができない親に限って、「うちの子はペラペラだ。」だの、「うちの子の○○語は完璧だ。」だのというフレーズを口にします。
その言葉ができない人が、どうしたらペラペラだとか完璧だとか言えるのでしょうね?
この辺にも、ひねくれ者の私はどうにもうさんくささを感じてしまうのです。






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7 件のコメント:

ミツフィ さんのコメント...

中国語教育が流行っているというのは初めて知りました。
中国語がビジネスに役に立つのかどうかはともかく、子ども自身にやる気がないと…と思ってしまうのですが…。
日本での子供の英語教室の状況に似ていますね。
日本で電車に乗ったときに、二組の親子を見かけたことがあります。互いに子供に英単語をしゃべらせて「うちの子は英語を覚えるのが早いのよ」と自慢しあっていましたが、犬に芸を覚えさせてるような印象でした…。

Frau L. さんのコメント...

ミツフィさん、
コメントありがとうございます。
ニューヨークの状況をNewsWeekかなにか、そんな雑誌で読んだのが最初だったと思うんですが(記憶が・・・)正直冗談だと思いました。
それでもニューヨークは何でもありかな、と自分で自分を無理矢理納得させていましたが、その早期中国語教育の波がとうとうスイスまで来たと知ってびっくりです。

子どもにやる気がなかったら、どれだけ親がお膳立てしようが費用をかけようが、だめなものはだめだと思っちゃうんですよ。

>犬に芸を覚えさせてるような印象でした…。
(爆)私もすごい日本人英語の発音で、子どもに3単語くらいしかない短い文章で話している親を見たことがあります。
普通の親子の会話があるのだろうか、と人ごとながら不安になりました。

>「うちの子は英語を覚えるのが早いのよ」
子どもは忘れるのも早いですよね、なんて横から言いたい私はイヂワルですね。(笑)

しろくま さんのコメント...

 面白かったです。ほぼ同感でした。流行について、いつも疑問な私は、自分に必要と思われるものでなければ、とくに手を出しません。
 子供への語学教育ですが、やはり中国語を嫌いになってしまった子供さんたちが可愛そうです。やはり目的あっての次のステップだと思いますね。親が子のために、有利に?はたらくだろうと思って早期教育を始めるようですけれど。
 うちは、10歳の息子がナポレオンなどの歴史ドキュメンタリーを良く見たせいか、歴史好きになり(お父さんのおかげ)、ドキュメンタリを見ながら、フランス語をつぶやくようになり、あっ、そんなに興味があるなら、習ってみる?と。友人の娘さんに頼んで、教えてもらっています。
 何事もおしつけっぽくなるのは、失敗の元になると思いますね。
 もっと、自由に、競争などの意識を除いて、本当に興味があるもの、好きなことの芽を見つけて伸ばしてやりたいと思いますね。
 

Frau L. さんのコメント...

しろくまさん、コメントありがとうございます。

親は「子どものため」と思っていろいろするんでしょうが、結果的に中国語に対する苦手意識を植え付けてしまうのでは元も子もない気がします。

そんなことをするんなら、まず自分が中国語を習ってみたらどうなんでしょう? そんな親の姿を見て興味を持ったら子どもだって勉強したくなるかもしれない。
「大人には難し過ぎる。」とか、「仕事が忙しい。」とか、言い訳の多い大人は多いですけどね。(笑)

歴史好き→ナポレオンって、いいパターンですね。
押しつけじゃない、本当の好奇心や知識欲って、そういうものなんだと思います。

匿名 さんのコメント...

あーっ、この記事、見逃してた。
このブログ、スマフォだと、すぐ
フリーズしちゃうし、新エントリーが
わかりにくいよぉぉ。
それから、コメ一覧つけれないの?

さて、全く同感。
中国語は、ほんっとぉぉに好きで興味がある
(ヒエログリフ解読したシャンポリオンみたいな 笑)
しか、マスターできない言語だよ。
日常サバイバル程度で読み書きを考慮しないなら
簡単だけどね。
子どもの貴重な時間の無駄遣いと見た。(笑)
ビジネスに使える?
子どもが10年かけて嫌々学んだ中国語と
中国人大人が必死で半年かけて学んだ
英語やフランス語やスイスドイツ語(笑)
さて、どっちが、使い物になるでしょう?

どうして外国語ができない大人って
人並み以上の知能がある人でさえ
誇大妄想的幻想に基づく非現実的期待を
子どもに抱いてしまいがちなのか、
ほんっとに不思議。

マロ さんのコメント...

ごめん。匿名で投稿しちゃったよーん。
じゃ、ドイツ対トルコに戻ります。
あ、審判、イタリア語圏スイス人かな?

以上、マロでした。

Frau L. さんのコメント...

>スマフォだと、すぐフリーズしちゃう
これ、こっちでちょっと調べてみたけどよくわからなかった。重いのかな?

>新エントリーがわかりにくいよぉぉ。
右のアーカイブを階層式にしてみたけどどう?

>それから、コメ一覧つけれないの?
この機能はない。(爆)

>子どもの貴重な時間の無駄遣いと見た。(笑)
そうそう。その時間、もっといろいろできるだろうにと思う。
やる気のない人が手を出していい言葉じゃないんだって。
印欧語の人間はこういう勘違いをしがちなんだなあ。

>子どもが10年かけて嫌々学んだ中国語と
>中国人大人が必死で半年かけて学んだ
>英語やフランス語やスイスドイツ語(笑)
>さて、どっちが、使い物になるでしょう?
スイスドイツ語以外は後者。(笑)
スイスドイツ語はドイツ人でも手を焼いてるし、そもそも書き言葉じゃないのがネックだね。
半年チューリッヒで頑張れば、もしかしたらいいところまでいける人もいるだろうけれど、バーゼルやベルンに移動したらもうアウト。
振り出しに戻るわけじゃないけれど、半分くらいはやり直しかな。
ヴァリス(ヴァレー)に行ったらそれこそ振り出しに戻る、だ。
あそこのドイツ語はうちの夫でも全部はわからないんだよ。(笑)

>どうして外国語ができない大人って
>人並み以上の知能がある人でさえ
>誇大妄想的幻想に基づく非現実的期待を
>子どもに抱いてしまいがちなのか、
>ほんっとに不思議。
みんな星一徹になっちゃうんだもん。
子どものことで暴走する親は世界中どこにでもいるし、どの時代もいたんだろうけれど、外国語で暴走する親の多いこと、多いこと。
「一言語で育てられる贅沢さ」をかみしめてもらいたいもんです。

>あ、審判、イタリア語圏スイス人かな?
そうでーす。
トルコ、負けちゃったね...。
あんなに主力選手がいない状況で1点差は頑張ったってことだと思う。
2年前のワールドカップには出られなくて残念だったけど、地力はある国だし、Best 4入りは誇れる結果じゃないかな。