2008年6月17日火曜日

EUROで見えたスイスの特殊性

livedoor スポーツの記事ですが、面白いところをついていたのでご紹介します。

私はたまたまオーストリアとスイスの両方に住んだ経験があるんですが、滞在時期がオーストリアは冷戦中、スイスは冷戦終結後、とかなりズレているので、直接比較するのは難しいと感じます。

先日、ご主人が2度目のスイス駐在という奥さんとおしゃべりしたんですが、彼女自身は1度目の駐在期間と2度目の今ではスイスが大きく変わったと感じるそうです。
彼女が感じる一番大きな違いは、治安の悪化とスイスらしさが消えつつあることだとか。
治安の悪化は私もひしひしと感じています。
仕事から帰るのが遅くなる女友達は、防犯スプレーをハンドバックに入れている人が多いですが、これもここ数年のこと。
安全な国スイスというのは、もう過去の話なのだと感じます。
この辺は日本に通じるものがありますね。

一方のスイスらしさ、これはもっと込み入った話になります。
スイスは元々多言語国家ですが、4つの言葉が入り混じって共存していたわけではなく、ロマンシュ語以外はほぼきれいに住み分けられた状態でした。
人の移動が全くなかったわけではなく、若い頃に見聞をひるめようと違う言語圏に仕事に行き、そのまま居着いてしまった人もいますが、全体から見れば極々少数。
今のように自分の生活圏の中で1日に間に4つも5つも異なる言葉を耳にすることはかつてはなかったでしょう。
この私のように田舎に住んでいても、ドイツ語しか聞かない日は皆無ですから。

でも、スイス全体がグローバル化したかというと、決してそうではないです。
それはあくまで表面的なもので、根っこの部分のスイスらしさは、その下に隠れるように残っていると思います。
でも観光立国スイスのイメージがビジネスに繋がることも十分わかっているスイス人は、いい感じで受けの良いスイスらしさをあちこちにちりばめる。(笑)
チョコチップクッキーのようなものです。
観光客や一時的にスイスに滞在する人は、クッキー生地(多文化共存社会)に驚き、たまに出くわすチョコの欠片(スイス文化)に感動し、
「ツェルマットって素敵〜! スイスって感じよね〜!」
と言って国に帰る。
そんなツェルマットを支えているのはポルトガルを始めとする外国人労働者なんですよね。
彼らなしに今のスイスが回っていくことはあり得ない。
だったら、もっとディープなスイスが知りたいといって、チョコだけを齧ろうとすると、大抵の外国人は歯が欠けるほど硬いチョコで頭を殴られたような気になります。

でもスイス人の中にはスイスらしさが失われていくこと、自国の文化が消えていくことに危機感を感じる人が多数いて、右派政党SVPの支持基盤の一つになっています。
自国の文化を守りたい気持ちは理解できますし、それが悪いことだとは思いません。
でもそのことと現在のSVPの路線が正しいかどうかは別物だと思うんですが、わかりやすい単純な言葉で、アジるように訴えるSVPに共感する人も多いんですよね。
(SVP支持率と教育レベルは反比例する、なんて統計結果も出ましたが、それについては敢えてノーコメント)

いささかまとまりのない投稿になりましたが、こんなことを頭にEuro 2008の試合を見ていただいても、多分面白さが倍増することはないです。(笑)





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